システム構築の時期には全てのスタッフが在宅勤務だったが、ServiceNowのCSMはクラウドベースのため、ハードに載せる必要がなく、およそ4カ月で実装できた。
問い合わせ窓口が一本化され、内容によって自動的に担当部署や担当者に割り振られる仕組みができたことで、抜けや漏れがなくなり、サービスへの満足度が向上した。
問い合わせの内容や対応履歴が自動的に記録されるため、品質管理指標の収集が容易になり、指標に基づく分析を重ねることで、ービスの品質向上を図ることができる。
新たなクラウドサービスの「お客様向けポータルサイト」にServiceNowのCSMを活用
一般法人向けサービスも提供する東京電力グループのシステム会社
東京電力グループのシステム会社として、グループ全体のIT、OT(制御技術)システムの開発・保守や、システムインフラの企画・構築、IT人材育成、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進などを担うテプコシステムズ。基幹系などの業務システムはもちろん、監視・制御システム、解析システム、確率論的リスク評価を含む原子力エンジニアリングなど、幅広い情報技術によって安定的な電力供給を支える一方、グループ全体としての目標である「稼ぐ力」を高めるため、グループ以外の法人や官公庁向けのサービスも拡充しています。
その一つとして、2020年4月には「ユーザー企業協働による価値共創」をコンセプトとするコミュニティ型クラウドサービス「TEPcube」のサービスを開始しました。これはベンダーが一方的にインフラやサービスを提供するのではなく、ユーザー企業同士が相互にナレッジやインフラ、データなどを共有することで活用の幅を広げ、価値を共創していくという、全く新しいコンセプトのクラウドサービスです。
そのメリットについて、同社システム企画室 クラウド事業推進部 クラウド事業推進グループの遠藤俊輔マネージャーは、「例えば、電気利用状況のデータと交通や小売といった他業種のデータと掛け合わせれば、今までとは違った視点でエンドユーザーの消費行動が見えてくるかもしれません。また、業務アプリケーションには、業種や企業を問わず汎用的に使えるものもありますが、ユーザー企業同士が協働すれば、より良いアプリを一緒に開発し、改善を加えながら生産性を高めていくといったこともできるはずです。協働と共創によって、より良いデータ活用や開発・運用の効率化が実現できます」と説明します。
テプコシステムズは、「TEPcube」のユーザー企業により良いCX(顧客体験)を提供するコミュニケーション手段として「お客様向けポータルサイト」を設けるため、ServiceNowのカスタマーサービスマネジメント(CSM)を導入しました。
ServiceNowのCSMは、企業のカスタマーサービスを高度化し、かつサービスを管理する企業側の業務効率も飛躍的に改善するソリューションです。
その最大のメリットは、あらゆる問い合わせの窓口が一つのポータルサイトに集約されることにあります。
ユーザー企業が「この件は、どこに問い合わせたらいいのか?」と迷うことがなくなり、受け付けた内容の処理は、自動的に担当部署や担当者に割り振られるので、問い合わせがそのまま放置されることもなくなります。タッチポイントの改善と、サービス対応力の強化によって、顧客満足度を高めることができるわけです。
「TEPcube」は2020年4月にサービスを開始しましたが、当初の4カ月間はポータルサイトがなく、ユーザー企業からの問い合わせは電話とメールで受け付けていました。システム企画室 クラウド事業推進部 クラウド事業推進グループの高橋悠二副長は「スタッフは総勢十数名しかおらず、問い合わせが重なると対応に遅れが生じました。しかも、障害への対処や、サービス変更などを同時並行で行わなければならないので、誰が、どのリクエストを担当しているのか、どこまで進んでいるのかといったことが把握できなくなり、ますます対応が遅れることも珍しくありませんでした」とその課題を語ります。
そこで、これらの問題を抜本的に解決するため、「お客様向けポータルサイト」を設けることにしたのです。
ServiceNow導入前の課題
● 限られたスタッフ数でも、顧客からの問い合わせに遅延なく対応できる仕組みを取り入れたい
● 受け付けたリクエストへの対応状況を“見える化”したい
高橋 悠二 氏
システム企画室 クラウド事業推進部 クラウド事業推進グループ 副長
サービスのセルフ化によって「オンプレミスのような使い心地」をb
ポータルサイトを導入することには、サービスを提供する企業側にも大きなメリットがあります。電話やメールによる応対とは違い、問い合わせの内容や対応履歴が自動的に記録されるので、わざわざエクセルなどに入力する手間がなく、記録漏れや記録ミスも解消されるのです。
しかも、その処理は「誰が、いつまでに、何をする」という指示を付けて自動的に割り振られ、期日が迫ってきた場合は、自動的に担当者にリマインドするアラート機能も付いているので、迅速に、かつ抜け漏れなく対応できるようになります。
遠藤氏は、ポータルサイト運営の“仕組み”としてServiceNowのCSMを選定したことについて、「すでに東京電力が社内におけるITサービスマネジメント業務の一部にServiceNowを活用しており、メリットも確認できていたことが決め手の一つとなりました。また、様々な情報を単一のデータベースで管理することで、運用効率化や戦略策定にもつながりますし、大規模なユーザー事例が数多くあることも安心でした」と説明します。また、テプコシステムズはServiceNowの導入に当たって、自動化とともに「サービスのセルフ化」が実現できる点も高く評価しました。これはユーザー企業ごとのサービスの契約状況や稼働状況を“ホワイトボックス化”する上で欠かせないポイントだったからです。
高橋氏は、「一般的なクラウドサービスでは、契約状況や、契約している仮想マシンのCPU・メモリの利用状況などが“ブラックボックス化”してしまうことがオンプレミスからの移行を妨げる一因となっています。『TEPCube』はこれを“ホワイトボックス化”して、『オンプレミスのような使い心地』を実現するというコンセプトを打ち出しました」と説明します。
ServiceNowのCSMなら、ユーザー企業がポータルサイト上のボタンをクリックするだけで詳細な利用環境や利用状況が画面上に表示されます。わざわざ電話やメールで問い合わせをしなくても、ユーザー企業がいつでも確認できるという「サービスのセルフ化」が簡単に実現するのです。これも同社がServiceNowを選定する大きな決め手となりました。
この他、高橋氏はServiceNowのCSMを選定した理由として、セキュリティが万全であることや、構築から実装までの期間が短いことなどを挙げています。
「長年、安全かつ安定的な電力供給を支えるシステムを開発してきた当社は、セキュリティを何よりも重視しており、その安心感が『TEPcube』の大きな訴求ポイントの一つとなっています。当然、サービスを支える仕組みについてもセキュリティの高さを吟味していますが、ServiceNowは、すでに世界中の多くのエンタープライズに導入されている実績を持ち、国内にデータセンターがあることや、2ファクタ認証などの仕組みがデフォルトで設定されていることなど、万全のセキュリティを整えていることも導入の決め手となりました」(高橋氏)
ServiceNowを評価したポイント
● グループ会社で導入実績があり、ユーザー事例も豊富で安心感があった
● サービスのセルフ化が実現できる
さらなる機能の活用によってサービス向上を目指す
高橋氏は今後、ServiceNowのCSMをさらに活用してサービスを向上させるためのステップとして、①自社におけるCSMの標準機能の積極活用と作業の内製化、②ユーザー企業に提供するセルフ機能や情報のさらなる拡充と、ServiceNowの追加機能の利用検討、③ServiceNow以外の製品・システムとの連携強化の3つを検討していると言います。
「まだ使い切れていない機能がいくつもあるので、まずは主な標準機能を使いこなせるようにし、サービスへの適用や改善作業はなるべく社内でできるようにしたいですね。また、ServiceNowはAPIによって様々なシステムと連携しやすいのも大きな特徴なので、今のところ実現できていないお客様によるファイヤーウォールの設定や仮想マシンの構築といったこともセルフでできるようにして、サービスの利便性をさらに高めていきたいと思います」(高橋氏)
最後に遠藤氏は、「ServiceNowは国内ユーザーが急増しており、活用事例や導入・運用支援を行うSIerが増えているのも非常に頼もしい点です。他のユーザーから得た情報やSIerからのアドバイスも積極的に取り入れながら、さらに活用の幅を広げていきたいですね」と語ってくれました。
ServiceNowのソリューションをさらに活用することで、「TEPCube」のサービス品質やCX(顧客体験)は、今後ますます高まりそうです。
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